熟しすぎた柿がたくさんあったので、、、漬物を作った

今日から12月。雪が降る季節になりました。まだ積もるほどではないですが、昨日の朝は、けっこうな勢いで大粒の雪が降っていました。私の住む地域では、まだしばらくは雨が降ると雪が混じる程度だと思いますが、県内では早くも積もっている地域もあるようです。

青菜の漬物を店先に見かける季節になり、いよいよ漬物の季節になってきた、という気がします。家庭で漬物を漬ける人は、夏の間もきゅうりやなすを浅漬けにしたりして、一年中漬物を食卓に載せているのかなと思いますが、なんといっても青菜漬が当地域の漬物の代表でしょう。

私は漬物は好きですが、最近はあまり漬けません。一緒に食事をする義父が漬物が一切ダメ、という人なので、自然と漬物を漬けなくなりました。漬物嫌いな人というのは、漬物の発酵したにおいがダメなようですね。

そんな私が、先日久しぶりに漬物を作りました。それは何かというと「柿漬」です。本来何と呼ぶべきなのかよくわからないのですが、柿を漬けるのではなく、「柿に漬けた」のでした。

家に柿の木が1本ありまして、とてもおいしい柿がなるのですが、最後は一斉に熟してしまい食べ切れなくなります。その熟しすぎの状態になってしまった柿の果肉を、皮からそっとはがして集め、塩を混ぜて漬物床とします。そこに野菜を漬けるのです。今年は、大根、人参、セロリといった、その時冷蔵庫にあった野菜を小さく切って入れてみました。1日くらい置くと、おいしく食べられる浅漬け状態になります。床から引き上げて、さっと洗って食べますが、サラダ感覚で食べられる浅漬けです。夫は喜んで食べていました。(漬物らしいにおいがないので、義父にも気兼ねせず食卓にのせることができました)

甘くてビタミン等も豊富な熟した柿の果肉、おいしくないわけはありませんよね。柿に含まれた栄養分が漬けた野菜に浸みこんでいるだろうとも思います。熟しすぎた柿をそのまま捨てるのがもったいなさすぎるので、苦肉の策の利用法なのですが、なかなか気に入っています。冷蔵庫に入れてある柿床はまだ使えそうなので、もう少しの間、季節の野菜の浅漬けを楽しみたいと思います。

タロとヤム

タロとヤム、ちょっとペットの名前かな?という感じがしませんか?。いえいえ、タロとヤムは、熱帯~温暖な地域で栽培されてきた重要な食料である植物です。

タロは、サトイモ科に分類される塊茎植物。ヤムは塊茎をつくるつる性植物でヤマノイモ科に分類されます。里芋やヤツガシラは、タロの仲間の栽培種、長芋やじねんじょなどのヤマイモはヤムの仲間、ということですね。

こうしてみると、イモといっても、ジャガイモ・さつまいも・さといも・長芋、それぞれ植物としては種類の違うものなのですね。「カラー版 世界食材事典」(柴田書店)でちょっと調べてみました。

ジャガイモは、ナス科の植物で、ボリビアやペルーのアンデス山脈で4000年~7000年もの間栽培されてきた塊茎植物で、スペイン人探検家によってヨーロッパに伝えられた、とのこと。これはわりとよく知られているかと思います。ナス科というのは、多くの有用植物を含み、ナスやトマト、トウガラシやピーマンまでナス科です。ジャガイモの花が咲いた後、実を付けることがありますが、あれはちょっとトマトに似ていますよね。(あれは食べてはいけません)

さつまいもも同じ仲間かな、と思いきや、私には意外だったのですが、なんとヒルガオ科の作物なのですね。アサガオなどと同じ仲間です。1万年から1万2千年前のペルーの洞窟遺跡からさつまいもの化石が見つかっている、ということですが、現在のさつまいもはメキシコから南アフリカの北部にわたる地域のどこかに生育していた野生種の交配種であると考えられている、とのことです。今日まで、様々な品種開発が行われていて、色も白から黄色、オレンジ、赤、紫があるということと、とても糖度が高くて甘いということから、もうそのままでスイーツ、というイメージですよね。ビタミンA,カリウム、ビタミンC,ビタミンB₆、リボフラビン、銅、パントテン酸葉酸も豊富に含む、ということで栄養面での価値も高い作物ですね。さすが、太古の昔から食べられてきただけのことはある。

タロは東南アジア原産と推定され、熱帯から温暖な気候の地域に育ち、自然の未開拓林を生育場所とする、とのこと。タロは4000年~7000年前から栽培されていたと考えられるが、日本や中国へ移入されたのはもっと後のことだと考えられ、アジア、太平洋の島々、西インド諸島の熱帯性気候のいくつかの国々では主食となっている、とのことです。自然の未開拓林で生育できる、ということが、熱帯の地域では栽培しやすいのでしょうね。

タロは苦みとえぐみのものになるシュウ酸カルシウムの結晶と生では消化できないデンプンを含むので、必ず加熱して食べなければならない、という記述もあります。さといもも、皮を剥くときに触ると、手がかゆくなってしまうことがありますが、あれはシュウ酸カルシウムの結晶が皮膚に刺さるためとか。手がかゆくなった時には、酢をつけるとすぐに治まります。シュウ酸カルシウムの結晶は酸に弱いのでしょうね。

ヤムはツル性植物の塊根であり、原産地は不明であるが、考古学上の発掘から1万年以上も前にアフリカと東アジアで栽培されていたことがわかっているそうです。ヤムは世界的に最も普及している食物のひとつで、南アフリカ西インド諸島では主食となっているとのことです。チャイニーズヤムのみが、温帯で生育する、ということで、日本で食べられている長芋やじねんじょは、このチャイニーズヤムの仲間ということですね。ヤムも、難消化性のデンプンを含むので必ず加熱して食べる、と書かれています。日本のナガイモやじねんじょは、すりおろして生で食べることができることから、性質としては、熱帯で育つヤムとは少し違いがありそうです。漢方ではヤマイモ(チャイニーズヤム)は薬として扱われていますし、野生種のあるものは製薬の材料になる、という記述もあります。ヤムもなかなかに興味深い作物です。

おおまかには芋と呼ばれるこれらの作物、ルーツがそれぞれ違うのに、どれも現代の日本でそれぞれ好まれて食べられている。日本の食は豊かだなあ、と改めて感じさせてくれます。なんとありがたいことかと思います。

 

おいしい芋

季節は秋から冬へと進んでいて、雨が降ると、雪に変わるかな?と身構える季節になってきました。

食べる物も飲み物も、温かいのがありがたく、温かいお芋にもたいへん魅力を感じるこの頃です。

さつまいもを焼いた焼き芋は、専門店ができるほどいつの間にか人気の食べ物になっています。たいへん糖度が高くおいしい新品種がいろいろ出てきたことも大きいのでしょう。また、さつまいもはビタミン等も豊富に含んでいるなど栄養面でも優れていて、健康に良い食べ物が好まれる現状に合っているのだと思います。

さつまいもの焼き芋は、家庭でも美味しく作れると思います。オーブンで160℃程度の比較的低い温度で1時間くらいじっくり焼くと、十分に甘くておいしいしっとりした焼き芋ができあがります。私は急ぐときは蒸し器で蒸しますが、40分くらいでできあがります。蒸かしたさつまいもも十分においしいと思います。(家族は、好きではない...又は、焼き芋なら食べるけど...という感じです)

4年前から家庭菜園を始め、今年もじゃがいも、さつまいも、さといもを育てました。植えるのが早く、穫れるのも早いのがじゃがいもです。作業が追い付かないということもあるのですが、さといもとさつまいもは、暖かくなるのを待ってゆっくり植えて、秋が深まってから収穫することになってしまいます。

今年は過去最高といえるくらい暑い夏でした。じゃがいもは7月には収穫でき、普通の作柄でしたが、暑い暑い夏を超えなければならなかったさつまいもとさといもは、過去3年とはあきらかに違った姿になっていました。雨も少なかったので、さといもの生育は明らかに悪く、菜園に行けた日には水もかけましたが全く追い付かず、生育が止まってしまって枯れたようになってしまいました。さつまいもは、いつものように青々とした葉が茂っていたのですが、暑さの中でぐったりとしおれる様子が見られました。過去3年、暑さの中でも元気だったさつまいもしか見たことがなかったので、ちょっと衝撃でしたが、なんとか持ちこたえてくれと、水をかけました。9月末に涼しくなった頃から再び元気になり、いつものように10月末に収穫しました。

ほとんど枯れてしまったと思ったさといもですが、掘ってみると、少ないながらも、芋を収穫することができました。品質はいつもの通りで、しっかりしてなめらかな肉質で、芋煮にしておいしく食べました。

さつまいもは、収量もいつもと大きな差はなく、品質にも差はない感じでした。ただ、深いところにお芋ができているような感じがしました。夏のダメージはあったと思われ、涼しくなってから草勢を回復したのでしょうか。

さといもとさつまいも、秋が深まったころにはしみじみおいしく感じるものですが、それぞれのおいしさは違いますね。さつまいもは、まずは甘いかどうか、次は肉質がどうか、でしょうか。甘さは甘いほど良い、ということだと思いますが、肉質はそれぞれ好みがあると思います。私は紅あずまのようにホクホクした感じが好きで、ねっとり系はそれほど好きではありません。さといものおいしさは、第一に食感、のように思います。ふんわりして、なめらかな食感が良いですよね。繊維質を感じる、ごつごつしたさといもだとがっかりしてしまいます。さといもの肉質については、これからいろいろ調べてみる予定です。

これから冬を迎えますが、自然の恵みのありがたさをしみじみ感じながら、まだ残っているお芋たちをしっかり味わいたいと思います。

アメリカンとイングリッシュ

マフィンが話題になっていたので、先日マフィンについて調べてみたのですが、それでマフィンと呼ばれるものには2種類あるということに気付きました。

「食辞林」という食の事典があり、それを引いてみると、【マフィン→マッフィン=イーストの代わりにベーキングパウダーを用いた生地を、カップ型のマフィン型に入れて焼いた小型の丸いパン。レーズンやベリー類を入れたりする。バター、ジャム、マーマレードなどを添えて食べる。〈イングリッシュマフィン〉はイーストで発酵させた生地を用いる。】とありました。

ネットで検索すると、業務用のパン屋さんのHPの記述が出てきて「実は一般的にマフィンと呼ばれるもののなかには、アメリカから来た「アメリカンマフィン」とイギリスから来た「イングリッシュマフィン」が存在します。」とありました。

つまり、カップケーキのような焼き菓子として作られるのがアメリカンマフィンで、酵母で発酵させた丸いパンがイングリッシュマフィンなのだということです。

私はお菓子として認識していたのですが、それはアメリカから来たマフィンだということですね。そういえば、スーパーで大手製パン会社製造の「イングリッシュマフィン」を買って食べたこともあります。イングリッシュマフィンは間違いなく、お菓子ではなくパンとして認識されるパンですね。

アメリカンマフィンについても、酵母を使わずにベーキングパウダーで膨らませた「簡易なパン」という記述で説明されている場合もあり、パンに近いお菓子、という感じでしょうか。

子どもの頃はいろいろなお菓子作りにチャレンジしましたが、マフィンを作った記憶はありません。が、似たようなものはいろいろ作っているので、だいたいの想像はできます。酵母を使わずにベーキングパウダーで膨らませるということで、簡易に作れるおやつパンという感じなのでしょうね。

手持ちの本をパラパラ見てみると、私が持っている最古のお菓子の本(母が持っていたもの)である、婦人之友社の「家庭でできる和洋菓子」(昭和50年発行の30版)には「マフィン」が載っています。カステラ類の項に入っており、内容はベーキングパウダーを使ったレシピです。この「家庭でできる和洋菓子」は、今見てもなかなか良い本だと思います。初版は昭和35年発行です。

柴田書店から出ているフランス菓子の専門書を開いてみましたが、当然のことながら、マフィンの記述はありませんでした。ちなみにこの本の目次を見ると、〈スポンジ生地・バター生地のケーキ、折り込み&練りこみのパイ、シュー生地の菓子、メレンゲの菓子、発酵生地の菓子、プチィ・フール、糖菓、チョコレート、デザート〉とあり、あらゆる種類のお菓子が存在している、という感じです。

アメリカンとイングリッシュでは、先にあるのがイングリッシュで、あとにできたのがアメリカンでしょう。パンを簡単に作る、ということについては、現在でもいろいろな取り組みがありますね。YouTubeでもいろいろな取り組みが紹介されていて、なかなか興味深いです。食品の加工、調理というのは、ずっと進化を続けてきたし、現在でもそれが続いてるのだな、と思います。

食品衛生の規制に変化はあるか

今日の朝日新聞に「『腐敗マフィン』購入者が証言」という記事が載っていました。納豆臭がしたとか、生焼けで、具は糸を引いていた、とか、聞いただけで引いてしまうような商品だったようです。

「防腐剤や添加物も使っていない」とうたっていたようですが、これは焼き菓子だったら使わないのが普通かなと思います。「砂糖の量が市販のお菓子の半量以下」というのは、それで本当においしい商品になっていたのか?ということが、まず気になりました。

購入者の証言に「粉を食べているような味だった」というものもあり、「生焼けだった」証言と共に、加熱が不十分だった、水分量が多すぎた、ということが疑われます。これでは、腐敗する危険は十分にありますよね。

店主の説明によれば「イベントの5日前から作り始めた」「数千個のマフィンを保管する場所がなくて、空調を18℃にして保管した」とのことで、小さな店舗の製造能力をはるかに超えた量を無理に販売しようとしたことにも原因がありそうです。

今年の夏には、駅弁の海鮮弁当での食中毒事件もありました。あの件も、大量に受注して米飯を他の業者に外注していたことで品質管理が十分にできていなかった、ことに原因があったようでした。

製造能力の範囲を超えることには、大きな危険を伴うということと思われます。

今日の朝日新聞の記事の中には、「消費者は何を信じて商品を買えばよいのか。」という一文があります。消費者は何を信じているのでしょうか?

漠然とでも、消費者は「食品を販売している業者は食品衛生の規制を守っており、行政は食品販売業者を監視している」ということを知っているのかな、と思います。何事もなければ、普段はそんなに意識することもないかもしれません。

しかし、大きな話題となる食中毒事件などがありますと、急に関心が高まるようにも思われます。

今回のこの件は、規模としては小さな事件かもしれませんが、SNSの普及した現状においては多くの人に知られ、関心を持たれたのは間違いありません。安全安心を求める人々の気持ちは年々強くなっているように感じますし、食品衛生の規制の強化につながっていくような気がします。

食品の腐りやすさについて

最近の話題に、イベントで販売されたマフィンで食中毒が起こった、ということがありした。

正直、ちょっと驚きました。マフィンというのは焼き菓子で、腐ったり、微生物が繁殖したりするものではない、という認識を持っていたからです。

専門知識のある方が解説している記事などを読んで、マフィンといっても砂糖を減らしたレシピになっていたこと、いろいろな具材が入っているマフィンであったこと、などを知り、そうであればやはり腐ったり、微生物が繁殖したりするな、、、と思いました。

子どもの頃はお菓子づくりが好きだったので、いろいろ作って、自分なりにアレンジしたりもしていました。その中で腐らせてしまった経験もあります。それは、かぼちゃのパイかケーキだった...と記憶しています。水分の多い野菜のようなものを入れたお菓子を作るには工夫が要るということを知った経験でした。

「焼き菓子はそう簡単に腐るものではない」「野菜など水分の多いものを入れたら腐りやすくなる」……こういった、食品の腐りやすさとは、どのような要因で決まってくるのでしょうか?

食品の変化・変質は、「物理・化学的要因」、「生化学的要因」「生物学的要因」によって起こる、とされています。腐敗や食中毒というのは、生物学的要因による変質ということになりますが、このことに大きく関わってくるのが「水分活性」です。

食品中の水は、食品成分と水素結合により結びついている『結合水』と、結びついていないから自由に動けて微生物が利用できる『自由水』として存在しています。一般に『結合水』は蒸発しにくく、微生物にも利用されにくいので、食品中の水の役割は、全水分含有量よりも『自由水』の含有量に依存する、ということになります。この、食品中の『自由水』の量を表すものさしが「水分活性」ということになります。次の式で定義されます。

水分活性=食品が示す水蒸気圧/水の最大水蒸気圧

『自由水』が十分にあれば、微生物が活動しやすい、つまり微生物による変質が起こりやすい、「腐りやすい」ということになるわけです。

微生物としては、細菌・酵母・カビがありますが、それぞれの活動に適した水分活性は、細菌は0.91以上、酵母は0.88以上、カビは0.80以上、です。

例えば、お菓子のカステラの水分活性は0.85となっていますので、一般の細菌が活動できる水分活性以下ということになります。おそらく普通の焼き菓子、普通のマフィンならば、一般の細菌が活動できる水分活性以下であろうと思われます。

食品に食塩や砂糖などの水和性物質を加えることは、水分活性を低くする、ということになるわけです。砂糖がたくさん入っている、食塩がたくさん入っている、そうした食べ物の方が日持ちがする、ということを私たちは経験的に知っています。

お菓子を作る際に、加える砂糖の量を減らして作る、というのは家庭で作る場合は気軽に行われることですが、このことはその食品の水分活性を高くすることになり、より微生物が使える自由水が多い食品を作ることになります。つまり腐りやすい食品になる、ということです。

生鮮食品である生肉・魚介類・果実・野菜・卵・水産食品などは、水分活性は1に近く、とても腐りやすいです。チーズ、パンもこれに次いで腐りやすい食品です。これに次ぐハム・ソーセージの水分活性は、0.92~0.93くらい。

日持ちのする食品は、水分活性が0.85~0.65の間くらいになります。干し魚・サラミソーセージ、ジャム・佃煮・味噌・乾燥果実など。乾燥食品の水分活性は0.65~0.5の間くらいです。0.5に近いところでは微生物は活動できなくなります。

食品を製造する場合に最も重要なことは衛生的であることだと思います。それを実現するために必要な知識はいろいろありますが、最も基本的なひとつが「微生物の繁殖しやすさ」のものさし「水分活性」なのです。

 

「あけび」の苦み成分

山形の秋の味としては「あけび」も忘れてはいけません。

あけびは、きれいな紫色の厚い皮の中に、白い甘い果肉と黒い種が入っている山の果実です。果物として食べるなら、中の甘い白い果実部分を食べるものでしょう。(口に入れたあとに種を出さなければならないので、食べやすいとは言えない気がしますが...)。

あけびの皮は、中の果実よりずっと存在感があり、ずっしりと重いです。食べ物が貴重であれば、食べたいと思えるものだったでしょう。このあけびの皮は、食感としては悪くないものではありますが、たいへん特徴的な苦みを持っています。山形県の山間地では、この皮を調理して食べてきたので、郷土料理として今日に伝えられています。

あけびは、わが家の庭木にもありますし、季節になると八百屋さんの店先でも見かけます。そのどちらにもなかなか手は伸びないのですが、どなたかからいただくことが多く、そのような場合には、実家の母が作っていたように、肉詰めのお惣菜を作ります。

あい挽き肉か豚挽き肉を買いに行って、舞茸を刻んだものと混ぜ合わせ、白い果肉を取り除いたあけびの皮につめていきます。きれいに作りたいときは、タコ糸で巻いて形を整えますし、簡易的に爪楊枝でとめて詰め物が出てこないようにしたりします。フライパンに油をひいて表面を焼き、その後、味噌や酒・みりん、砂糖などを加えて、焦げないように煮詰めてできあがりです。

このように料理すると、味も濃く脂分もある料理になりますので、苦い皮も食べることができます。タンパク質や脂質のコクで、苦みがマスキングされる感じでしょうか。苦みが嫌いな人は、全然積極的に食べたいものではないような気がしますが、山菜好きが多い山形県民は苦み慣れしていて、食べられる人が多いように思われます。このあたりは世代によって変わってきてしまうでしょうか。

 

あけびの苦み成分について、少し調べてみました。

あけびの蔓は、木通と呼ばれる生薬でもあるようで、1927年(昭和2年)にはあけび蔓の成分を分析した論文が日本化学学会誌に発表されています。総括に「アケビより新配糖體(C35H56O20)3を抽出しAkebinと命名せり」と記載されています。1974年の薬学雑誌には、「アケビの茎のサポニン成分について」の報告があります。

配糖体(體は体の旧字)って何?、サポニンって、なんだっけ?という方が多いと思いますので、簡単に説明します。

配糖体というのは「糖がグリコシド結合により様々な有機化合物と結合したもの」と食品の教科書には書いてあります。「植物に含まれる配糖体には、有害物質やその前駆物質がある」という記述も(毒は薬で薬は毒である、わけですので、薬効成分というのは毒と同じ仲間であることも多いわけですね)。配糖体の仲間には、じゃがいものソラニンや、梅やあんずの未熟種子に含まれるアミグダリンなどの有名な植物の毒成分が含まれます。そして、サポニンというのも、この配糖体の一種なんですね。

サポニンの中では、大豆サポニンが有名かと思いますが、大豆の苦み、えぐみの元となっている成分です。このサポニン界面活性作用を持つので、泡立ちの原因となります。大豆から豆乳を作ったことのある人なら知っていると思いますが、生の豆乳を加熱すると泡立って鍋から噴きこぼれそうになりますよね。あの強力な泡立ちはサポニンが含まれているためです。通常はアクとして取り除かれる成分です。

ということで、あけびの皮の苦み成分は、Akebin(アケビン)と名付けられたサポニン、配糖体、ということのようです。苦み・えぐみとして認識されるサポニンの一種が含まれるとなれば、あのあけびのくせのある苦みにも納得です。

様々な機能性のある成分は、苦みを持つことも多く、苦み物質は薬のような成分であると言えるでしょうか。そして、薬と毒は親戚のようなものでもあるのですね。