タロとヤム

タロとヤム、ちょっとペットの名前かな?という感じがしませんか?。いえいえ、タロとヤムは、熱帯~温暖な地域で栽培されてきた重要な食料である植物です。

タロは、サトイモ科に分類される塊茎植物。ヤムは塊茎をつくるつる性植物でヤマノイモ科に分類されます。里芋やヤツガシラは、タロの仲間の栽培種、長芋やじねんじょなどのヤマイモはヤムの仲間、ということですね。

こうしてみると、イモといっても、ジャガイモ・さつまいも・さといも・長芋、それぞれ植物としては種類の違うものなのですね。「カラー版 世界食材事典」(柴田書店)でちょっと調べてみました。

ジャガイモは、ナス科の植物で、ボリビアやペルーのアンデス山脈で4000年~7000年もの間栽培されてきた塊茎植物で、スペイン人探検家によってヨーロッパに伝えられた、とのこと。これはわりとよく知られているかと思います。ナス科というのは、多くの有用植物を含み、ナスやトマト、トウガラシやピーマンまでナス科です。ジャガイモの花が咲いた後、実を付けることがありますが、あれはちょっとトマトに似ていますよね。(あれは食べてはいけません)

さつまいもも同じ仲間かな、と思いきや、私には意外だったのですが、なんとヒルガオ科の作物なのですね。アサガオなどと同じ仲間です。1万年から1万2千年前のペルーの洞窟遺跡からさつまいもの化石が見つかっている、ということですが、現在のさつまいもはメキシコから南アフリカの北部にわたる地域のどこかに生育していた野生種の交配種であると考えられている、とのことです。今日まで、様々な品種開発が行われていて、色も白から黄色、オレンジ、赤、紫があるということと、とても糖度が高くて甘いということから、もうそのままでスイーツ、というイメージですよね。ビタミンA,カリウム、ビタミンC,ビタミンB₆、リボフラビン、銅、パントテン酸葉酸も豊富に含む、ということで栄養面での価値も高い作物ですね。さすが、太古の昔から食べられてきただけのことはある。

タロは東南アジア原産と推定され、熱帯から温暖な気候の地域に育ち、自然の未開拓林を生育場所とする、とのこと。タロは4000年~7000年前から栽培されていたと考えられるが、日本や中国へ移入されたのはもっと後のことだと考えられ、アジア、太平洋の島々、西インド諸島の熱帯性気候のいくつかの国々では主食となっている、とのことです。自然の未開拓林で生育できる、ということが、熱帯の地域では栽培しやすいのでしょうね。

タロは苦みとえぐみのものになるシュウ酸カルシウムの結晶と生では消化できないデンプンを含むので、必ず加熱して食べなければならない、という記述もあります。さといもも、皮を剥くときに触ると、手がかゆくなってしまうことがありますが、あれはシュウ酸カルシウムの結晶が皮膚に刺さるためとか。手がかゆくなった時には、酢をつけるとすぐに治まります。シュウ酸カルシウムの結晶は酸に弱いのでしょうね。

ヤムはツル性植物の塊根であり、原産地は不明であるが、考古学上の発掘から1万年以上も前にアフリカと東アジアで栽培されていたことがわかっているそうです。ヤムは世界的に最も普及している食物のひとつで、南アフリカ西インド諸島では主食となっているとのことです。チャイニーズヤムのみが、温帯で生育する、ということで、日本で食べられている長芋やじねんじょは、このチャイニーズヤムの仲間ということですね。ヤムも、難消化性のデンプンを含むので必ず加熱して食べる、と書かれています。日本のナガイモやじねんじょは、すりおろして生で食べることができることから、性質としては、熱帯で育つヤムとは少し違いがありそうです。漢方ではヤマイモ(チャイニーズヤム)は薬として扱われていますし、野生種のあるものは製薬の材料になる、という記述もあります。ヤムもなかなかに興味深い作物です。

おおまかには芋と呼ばれるこれらの作物、ルーツがそれぞれ違うのに、どれも現代の日本でそれぞれ好まれて食べられている。日本の食は豊かだなあ、と改めて感じさせてくれます。なんとありがたいことかと思います。