減らせばいいというものでもない…脂質の栄養学

科学というのは、ずっと進化し続けているというか、それまでの定説が覆り、新たな知見が定説になるということが、ずっと続いているもののようです。

人にとって身近な科学である栄養学も、常に進歩しています。今、正しいと思っていることも、未来のある日、新たな発見によって必ずしも正しくなくなる、ということもあるのかもしれません。

情報があふれている現代、正しく新しい情報を知って取り入れていくというのは、実はけっこう難しいような気がします。何らかの専門分野を持っている人は、自分の専門分野については、常に勉強して知識を刷新しながら生きていくのでしょうが。関心を持たない分野については、多くの人が昔習って覚えたことを刷新する機会などないままにすごしてしまいそうです。

昭和の後半からこれまで、どちらかというと食べすぎ、カロリー過多が問題で、不足している栄養素はカルシウムくらい、という時代が長かったような気がします。

カロリー過多の場合、カロリーの高い「脂質」を減らした方がいい、となるためか、「脂質」というのは減らした方が良いもの、というイメージがある気がします。そして最近は、「糖質」を取りすぎてはいけない、ということがすっかり定着していて、たくさん摂った方がいいと言われているのは「たんぱく質」だけという状況です。

しかし、体内で合成できない栄養素は必ず食品から摂らなければならず、それが、ビタミンとかミネラル、必須アミノ酸、必須脂肪酸、であるわけです。タンパク質はアミノ酸からできていて、アミノ酸の中でも必須アミノ酸というのは一定量以上は必ず摂らなければならず、それを含むタンパク質の摂取は重要である、というわけ。それと同様に、必須脂肪酸を含む脂質も必ず摂らなければならないわけです。不足すれば体調に何らかの影響が出てしまいます。

そもそも脂質って、どのくらい摂ればいいのか?、栄養学の教科書でチェックしてみました。脂質摂取の目標値は、総エネルギー摂取量の20~30%となっています。

科学の進歩により、必須脂肪酸というものがあるということが明らかになる以前は、脂質はただのエネルギー源と考えられていたようです。

脂質には、多くの種類があるけれど、栄養学的に重要なのは、単純脂質であるトリアシルグリセロールと、複合脂質であるリン脂質、誘導脂質であるステロール。脂質の多くは構成成分として長鎖脂肪酸を含んでおり、脂肪酸は食物中の脂質から供給される他、体内でも合成されます。

現在、体内で合成することができないので、必ず食事から摂取しなければならないとされる必須脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸のn-6系である「リノール酸(18:2)」、n-3系である「リノレン酸(18:3)」です。オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸、と呼ばれたりしていますね。

n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の食事摂取基準は、年齢・性別別に定められていて、例えば、30歳~49歳の男性はn‐6系脂肪酸:10g/日、n‐3系脂肪酸:2g/日、30歳~49歳の女性でn‐6系脂肪酸:8g/日、n‐3系脂肪酸:1.6g/日となっています。

この脂質の栄養というのは、健康上、生活習慣病の予防という点において、けっこう重要であるようです。

歳をとっても健康でいるためには、エネルギー過多にならないように、糖質も摂りすぎないように、たんぱく質が不足しないように、気を付けると共に、脂質の質についても注意を払う必要があるようです。このあたりのことは、一般的にはどのくらい知られているのかが気になります。